
「さっき授乳したばかりなのに…」「オムツも替えたのに…」「抱っこしても泣き止まない…」
夕方になると、赤ちゃんが理由もなく大泣きして止まらない。何をしてもダメで、自分の育て方が悪いのかも…と、不安や疲労がピークに達してしまう。そんな経験はありませんか?
もしかするとそれは、「黄昏泣き(たそがれなき)」かもしれません。
目次
黄昏泣きってなに?
黄昏泣きとは、主に生後1〜6か月頃の赤ちゃんによく見られる、夕方になると急に機嫌が悪くなり、理由もなくぐずり続ける現象のことを指します。日本では「黄昏(たそがれ)」の時間帯に起こることが多いことからこの名前がついており、英語では「Evening fussiness」や「Witching hour」とも呼ばれています。
多くの場合、黄昏泣きは一般的に午後4時〜7時の時間帯に多く見られます。この時間、ちょうど夕飯の準備や兄弟のお世話が重なりやすいため、親にとっても一番忙しく疲れるタイミングです。
「何時頃から始まるのか」という問いに対しては個人差がありますが、だいたい毎日同じ時間帯に起きる傾向があるのが特徴です。
なぜ起こるの?黄昏泣きの原因
黄昏泣きがなぜ起きるのか、実は医学的にもはっきりとした原因は解明されていません。ただし、いくつかの仮説があります。
赤ちゃんの神経系が未発達で、日中に受けた刺激(音、光、人の声など)をうまく処理できず、夕方になるとそれが一気にあふれてパニックのようになってしまう
体内リズム(サーカディアンリズム)が整っておらず、夕方に不安定になりやすい
母親や周囲の疲れや緊張を感じ取ってしまい、不安になって泣いてしまう
ただし、どれも「親の育て方が悪い」わけではなく、成長の過程で誰にでも起こり得る一時的な現象です。まずは「私のせいじゃない」と、気持ちを少し軽くしてもらえたらと思います。
黄昏泣きと他の泣き方との違い
黄昏泣きは、他の「原因のある泣き」とは違い、以下のような特徴があります。
毎日ほぼ同じ時間帯に起こる
お腹が空いているわけでもなく、オムツも濡れていない
抱っこしても、泣き止んだかと思えばまたすぐ泣き出す
泣き方が激しく、あやしてもなかなか収まらない
そのため、「なんで泣いているのかわからない」ことが親にとって一番つらい点でもあります。
黄昏泣きの対処法いろいろ
黄昏泣きに即効性のある解決法はありませんが、赤ちゃんが少しでも落ち着く方法はあります。いろいろ試して、我が子に合うものを見つけてみましょう。
環境を落ち着かせる
夕方になったら部屋の明かりを暗めにし、テレビや音を控えめにします。静かな空間にすることで、赤ちゃんが安心しやすくなります。
抱っこでゆらゆら
立って抱っこしてゆらゆら揺れる、スリングで密着するなど、体を密着させて揺れる動きは赤ちゃんにとって心地よい刺激です。
ホワイトノイズを使う
ドライヤーや掃除機の音、心音アプリなどの「ホワイトノイズ」は、胎内音に近いため、赤ちゃんを落ち着かせる効果があると言われています。
お風呂に入れて気分転換
少し早めにお風呂に入れてみると、体が温まり、気持ちもリセットされることがあります。お湯に浸かるのが好きな赤ちゃんなら、泣き止むきっかけになるかもしれません。
外に出てみる
天気の良い日は、夕方のお散歩もおすすめ。外気に触れることで気分が変わり、泣き止むこともあります。
おしゃぶりで落ち着く子も
黄昏泣き対策として、おしゃぶりを使う家庭もあります。吸う動き(吸啜:きゅうてつ)は赤ちゃんに安心感を与えるため、落ち着くきっかけになる場合があります。ただし、赤ちゃんによっては嫌がることもあるため、合わないようであれば無理に使う必要はありません。
黄昏泣きに向き合う親へのメッセージ
毎日泣かれると、つい「何がダメだったんだろう」と自分を責めてしまいがちです。でも、黄昏泣きは誰のせいでもない自然な現象です。赤ちゃんが言葉を話すことができない代わりに、「今日もがんばったよ」「いっぱい刺激を受けたよ」と泣いて教えてくれているのかもしれません。
SNSや周囲の赤ちゃんと比べる必要もありません。「うちは全然泣かないのよ」と言う人もいるかもしれませんが、それぞれに違いがあります。あなたと赤ちゃんのペースを大切にしてください。
黄昏泣きは、たいてい生後6か月頃から徐々におさまっていきますが、個人差があり、1歳ごろまで続く赤ちゃんもいます。「1歳になってもぐずぐずするのは異常?」と不安になるかもしれませんが、成長や発達のスピードはひとりひとり違うため、焦る必要はありません。
注意が必要なケースも
黄昏泣きと似ていても、体調不良が隠れている場合もあります。以下のような場合は、念のため小児科を受診しましょう。
明らかにいつもと泣き方が違う
顔色が悪い、熱がある、ぐったりしている
授乳量が減った、嘔吐がある
声がかすれている、呼吸が苦しそう
また、親自身が限界を感じているときも、医師や育児相談窓口、地域の子育て支援センターに相談することをためらわないでください。
「泣かせっぱなし(放置)でもいいの?」と悩む方もいますが、赤ちゃんが泣いているのは何かを伝えたいサインです。たとえ原因がわからなくても、そばにいて声をかけたり抱っこしてあげることで、赤ちゃんは安心します。完全に放置するのは、赤ちゃんにとって不安やストレスにつながる可能性があるため、注意が必要です。
まとめ:黄昏泣きは、成長の中でよくあること
黄昏泣きは、生後間もない赤ちゃんによく見られるごく自然な現象です。原因がはっきりしないだけに不安になりがちですが、多くの赤ちゃんが経験し、やがておさまっていくものでもあります。
毎日夕方になると繰り返される泣き声に、戸惑いや疲れを感じることもあるかもしれません。それでも、泣いている赤ちゃんは「困っている」「助けてほしい」と何かを伝えようとしているだけで、誰かを責めたいわけではありません。
すぐに泣き止まないときも、あやし方がうまくいかないと感じるときも、「うまくできていない」と思わなくて大丈夫です。赤ちゃんにとって、そばにいてくれる存在そのものが安心につながります。
黄昏泣きには終わりがあります。今は少し大変でも、いつか「あの時はよく泣いてたな」と笑って思い出す日がきっと来ます。
できる範囲で対処しながら、必要なら周囲に頼ることも選択肢のひとつです。赤ちゃんと一緒に、少しずつ慣れていけば十分です。