介護施設の費用が払えないときはどうしたらいい?対処法や予防策を紹介

「老人ホームの費用が厳しくなってきて、心配で仕方がない」「支払いが難しくなった場合、一体どうなってしまうんだろう?」など、介護施設の費用に対する不安を感じていませんか?

支払いが難しくなる原因は様々です。「資金が限られてきた」「家族の助けを借りることが難しくなった」「介護の必要が増え、負担が増えてしまった」といった理由があるかもしれません。こんな状況になると、老人ホームとのトラブルも心配ですね。

この記事では、介護施設の支払いが難しくなったときの対処法や、予防策についてお伝えします。自分の将来や家族のことを考えると、不安を感じることもあるかもしれませんが、冷静に対処法を知っておくことが重要です。

介護施設の費用が払えなくなると

財布を開く手元

最初は介護施設の費用もなんとか支払えていても、その後、ご家族の事情が変わり、援助を受けられなくなってしまったり、自宅を売って介護費用に充てようとしたものの、なかなか売却が難しい、さらに、介護度が上がり負担額が増えてしまい資金が足りなくなったり…。

こうした事情の変化があると、費用が支払えなくなるケースが増えます。では、実際に費用が払えなくなった時、どのような流れになるのかを見てみましょう。

数か月の猶予期間がある

費用の支払いには、一定の猶予期間があることがあります。介護施設の月額費用を支払わなかった場合、すぐに強制退去というわけではありません。施設によって異なりますが、契約書や入居規則には数ヵ月の猶予期間が明記されていることが一般的です。

実際には、支払いに窮した場合でも、ある程度の期間が与えられているので、急なストレスを感じずに済みます。ただし、入居時にもらった契約書や規則にはこの猶予期間についての詳細が書かれています。予め確認しておきましょう。

身元引受人(連帯保証人)に連絡が入る

入居者本人が介護施設の費用を支払えない場合、施設側は身元引受人や連帯保証人に滞納分の支払いを求めることがあります。身元引受人や連帯保証人は、急に支払いを求められる可能性があるので費用が払えなくなったら事前に伝えておくと良いでしょう。

支払えない状態が続くと、身元引受人や連帯保証人も対処が難しくなります。滞納分が全額支払われれば問題は解消しますが、身元引受人や連帯保証人も支払いに困難を感じる場合、滞納が続くことになります。入居前に身元引受人や連帯保証人との相談も重要ですね。

猶予期間が過ぎると強制退去に

滞納が解消できないと、強制的に退去させられることも考えられます。身元引受人や連帯保証人も支払いに行き詰まり、支払えない状態が続くと、施設からの強制退去の可能性が出てきます。

何よりも気をつけなければならないのは、新しい施設が見つかっていなくても、入居施設が定めた期限には退去しなければならないことです。お金の問題は家庭にとってもストレスの源ですが、将来を考えて、入居前に慎重に対策を練ることが必要です。

介護施設の費用が払えないときの対処法

iphoneで電卓アプリを開いている

多くの場合、介護施設の費用は家族が金銭的なサポートをしていますが、もちろんご家族も自身の生活を考えなければなりません。

親の介護をする世代は、子どもの支出がかさむ時期でもあり、金銭的な余裕がないと感じる方もいるでしょう。

そこで、老人ホームに入居しているにもかかわらず、月々の利用料の支払いが難しくなった場合、どのように対応すれば良いのか、その具体的な方法についてご紹介します。

介護施設のスタッフやケアマネージャーに相談する

支払いが難しくなった場合、早めに施設スタッフやケアマネジャーに相談するのが良いでしょう。

彼らはより低額な施設を紹介してくれる場合もあり、仲介業者を通じて施設の情報を提供してくれることもあります。アドバイスをもらうことで、新たな選択肢が見つかることもありますよ。

そのアドバイスを元に、施設長に支払い期日の延期や分割払いの相談をすることも大切です。早めに相談することで、柔軟な対応が期待できます。将来に備え、不安を抱えているときは、迅速な行動が重要ですね。

費用の安い介護施設に転居する

一時的な支払いが難しい場合を除いて、今後も改善が見込めないなら、継続して費用が支払えない可能性が高まります。

もしも、現在入居している施設が初期費用の償却期間中で、未償却期間が残っているなら、未払い利用料との相殺差額や原状回復費を除いた分が返金されることがあります。次の転居に活用できるチャンスですね。

もし転居先の初期費用が払えない場合、地域の高齢者福祉課や紹介センターに相談するのも良いでしょう。そして、要介護3以上であれば、費用が比較的安い「特別養護老人ホーム」の入居も検討できます。ただし、人気がありますし、要介護度の高い方が優先されるため、入居までに時間がかかることもあります。希望があれば、ケアマネジャーや市区町村の窓口に相談してみましょう。将来を見据え、計画的に進めていくことが大切です。

在宅介護に切り替える

在宅介護に切り替えると、居住費がかからないため、介護費用を抑えやすくなります。

ただし、注意が必要です。在宅介護に切り替える際、介護用ベッドや車椅子、介護リフォーム費用などの初期費用がかかることがあります。これは慎重に計画を立てる必要があります。

また、在宅介護では家族の協力が不可欠です。家族の協力が得られるかどうか、じっくりと話し合い、検討してから在宅介護に変更することが重要です。

介護施設の費用が払えないときに利用できる制度

空の財布を開いている手元

介護保険サービスでは、心強い制度が整っています。

また、各自治体で提供されている助成制度がある場合もあります。これらの制度を活用することで、介護負担を軽減することができます。

制度を使えば、老人ホームの費用を大幅に抑えることができる場合があります。ケアマネジャーや役所の窓口で相談してみることをおすすめします。

特定入所者介護サービス費

特定入所者介護サービス費は、所得が低い介護保険適用者が介護サービスを受ける際、所得に応じて居住費や食費が割り引かれるものです。市区町村に申請を行い、その後に交付される「介護保険負担限度額認定証」を施設に提示することで、制度を利用することができます。

また、本人からは負担限度額までしか徴収されないため、支払った額が後日戻ってくることはありませんが、負担が少なく済むので安心ですね。将来を考える上で、このようなサービスを利用することで生活の充実度が向上するかもしれません。

参考:厚生労働省

介護保険料の減免制度

40歳を迎えると、介護保険料の支払いが始まります。

「減免制度」は、特別な理由により、介護保険料や介護サービスの利用料を軽減または免除してくれる制度です。減免のためには一定の条件を満たす必要があり、自分で市区町村に申請を行います。条件を満たし、減免が受けられると、介護保険料は最大で7割も安くなります。

ただし、要件や書類はケースによって異なり、非該当の場合もあるため、まずは相談をしてみることが大切です。

高額介護サービス費制度

介護サービスの自己負担金は基本的に1割と言われていますが、実際に利用を重ねると思わぬ出費がかさむことがあります。

この負担を少しでも軽くするために、一定の金額を超えて自己負担金を支払った場合、超過分が戻ってくる仕組みが「高額介護サービス費制度」なのです。

ただし、この制度で受給できる金額は所得などの諸条件によって異なります。具体的な数字や条件は確認が必要です。

また、入居や入院時にかかる食費や雑費、住宅改修費、福祉用具購入費などは高額介護サービス費の対象外となりますので、注意が必要です。これらの細かいポイントを把握して、介護に備えることが重要ですね。

 

高額介護サービス費の負担限度額
課税所得(区分)上限額対象者
世帯全員が市区町村民税非課税、
前年合計所得金額+公的年金収入額80万円以下
1万5,000円個人※1
2万4,600円世帯※2
生活保護受給者など1万5,000円
世帯全員が市区町村民税非課税2万4,600円
市町村民税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満4万4,400円
課税所得380万~690万円(年収約770万~1,160万円)未満9万3,000円
課税所得690万円(年収約1,160万円)以上14万100円

この制度は、自分だけでなく、家族全体の負担も考慮されているので、夫婦で協力して利用することができ、支給される額も上限を超えている場合にも対応できます。

一度申請を行えば、2回目以降も該当するたびに支給されるという点は、便利ですが、2年間の時効があることには注意が必要です。制度の詳細を把握し、時効に気を付けながら利用することで、安心してサポートを受けることができるでしょう。

高額医療・高額介護合算制度

「高額医療・高額介護合算制度」は、同一世帯で支払った介護保険サービスと医療費の自己負担額が基準を越えた場合、越えた分の金額が戻ってくる仕組みです。

合算期間は8月1日から翌年の7月31日までで、自治体の国民健康保険窓口で申請することが必要です。しかし、同じ世帯内でも「夫が75歳以上で後期高齢者医療保険、妻が75歳未満で国民健康保険」など、加入する保険が異なる場合は合算できません。また、基準を500円以上越えない場合も適用外となります。

自治体独自の助成制度

自治体独自の助成制度を活用することで、50代の私たちが介護サービス費の負担を軽くする方法がありますね。所得が低い方や非課税世帯などが対象となるこの制度、これは注目すべきです。

この制度を利用するには、各地域ごとに条件や申請手続きが設けられているため、市区町村の窓口に問い合わせてみるのが良いでしょう。50代の私たちがこれを知っておくことで、将来に備えつつも安心して介護サービスを利用できるかもしれません。

対象となる施設もさまざまで、介護福祉施設サービスや介護老人保健施設サービス、介護療養型医療施設サービスなどが挙げられます。地域密着型の介護老人福祉施設も含まれているので、地元で受けられるサービスを活用することができそうですね。

生活保護

年金での支払いが難しくなったり、家族の援助が期待できなくなったりすると、老人ホームの費用の支払いに困ることがありますね。そんな時は、生活保護の受給を考えることが一つの選択肢となります。ただし、生活保護を受けると様々な制限があるため、最終手段として考えておくべきです。

生活保護を受け入れている老人ホームは比較的少ない傾向があります。今お住まいの老人ホームが生活保護受給者を受け入れてくれるならば、それが一番良いですが、場合によっては転居を迫られることもあるでしょう。継続して入居が難しい場合は、市区町村の生活支援担当窓口、ケースワーカー、ケアマネジャー、また老人ホーム紹介センターを利用して、生活保護を受け入れてくれる施設を探してみましょう。

特に老人ホーム紹介センターは、入居までのサポートをしてくれるだけでなく、各老人ホームに対して幅広く知識を持っているので、安心して相談できると思います。これらの窓口を上手に利用して、自分に合ったサポートを見つけていくと良いでしょう。

費用が足りなくならないための予防策

豚の貯金箱とコイン

介護施設の費用を心配しないためには、予防策が重要ですね。転居を検討する場合でも、初期費用がかかりますし、入居時に一時金が必要な施設もあるため、一定の資金が必要です。介護に備えるためには、お金の計画が欠かせません。

生活福祉資金(長期生活支援資金)

長期生活支援賃金貸付制度は、老後資金のサポート制度です。

この制度は、65歳以上の方が対象で、地域の社会福祉協議会が資産や土地を所有する方に対して、在宅福祉や社会参加を促進し、自立した生活をサポートするために資金を貸し付けています。

死亡するまで土地や建物を担保にお金を借りることができるのが特徴的です。しかし、連帯保証人が必要な場合もあるため、具体的な条件や手続きについては、事前に地元の社会福祉協議会に確認することが重要です。

リバースモーゲージ

リバースモーゲージは、自分の家を担保にして、金融機関からお金を借りるしくみです。

この仕組みでは、高齢者が亡くなるまで、金融機関が年金のように一定の額を支払ったり、一括でお金を貸し付けたりします。そして、高齢者が亡くなった時には住宅を売却して借りたお金を返済します。

リバースモーゲージの利点は、家に住み続けながらお金を借りられることです。

ただし、不動産の価値が下がったり、金利が上がったりすると、担保の価値が不足する可能性があるため、その際には一部を返済しなければならないことに留意が必要です。しっかりとリスクを理解して、将来の生活を考える際に利用すると良いでしょう。

マイホーム借り上げ制度

マイホーム借り上げ制度とは、「一般社団法人 移住・住み替え支援機構(JTI)」が提供している、50歳以上の高齢者向けの、自分の家をJTIが借り上げ、それを再貸しする制度です。

この制度に応募すると、一度入居者が見つかると、部屋が空いても一定の賃料が保証されるようになります。自宅が賃貸可能な状態である限り、借り上げは続けられ、安定した賃料収入が期待できます。これによって、自分の家を売却することなく、資金として有効活用することが可能です。

費用を抑えるための介護施設の選び方

黒いジャケットと白いヘルメットをかぶった男が、水域近くの緑の芝生の上に立っている

お金の心配を軽減するためには、無理なく支払える施設を選ぶことが大切です。

ここでは、負担が軽い介護施設を見つける方法を紹介していきます。

立地が良くない施設

都心よりも地方や駅から離れた場所にある老人ホームは、比較的費用を抑えることができる傾向があります。家族としては、面会や訪問の際には不便が生じるかもしれませんが、費用の点では都会よりも経済的に利点がありますね。

多床室のある施設

多床室は相部屋のことで、個室よりも費用が抑えられます。個室にこだわらないし、相部屋でも問題ないなら、多床室のある施設を利用すると経済的に良いでしょう。

ただし、相部屋を選ぶ際のデメリットも考慮すべきです。夜間のいびきや足音が気になって眠れないことがあったり、気が合わない相部屋の人がいるとストレスになることもあります。また、プライベートな時間を確保しにくいことも挙げられます。

安い反面、これらのデメリットもあるので、総合的に判断する必要がありますね。

古い施設

費用を節約したい方は、新しい施設よりも年数の経っている施設が選択肢になるかもしれません。

ただし、設備が古いことで生活の快適さに欠けることも考えられます。便利さに欠ける場合もあるため、事前に見学しておくことが重要です。

毎月の支払いを抑える方法

初期費用の支払いプランや、施設に相談して家族ができることは積極的に行うことで、毎月の費用を抑えることもできます。

初期費用を一括で払う

初期費用がかからない施設が増えてきていますが、注意が必要です。なぜなら、初期費用がかからない代わりに、月額料金が高いことがよくあります。これは、施設運営にかかる経費を月額料金に反映させているためです。

もちろん、初期費用がゼロでも、長期間滞在すればするほど総費用が高くつくことがあります。だからこそ、将来的な長期滞在を考えている場合は、初期費用がある施設の方が結局はお得になることもあります。

ただし、初期費用の一部はホーム運営会社の利益になってしまうこともあるので、その辺りも注意が必要です。契約前に、何年住めばお得になるのか、トータルでの費用をよく確認しておくことが重要です。

洗濯や買い物は家族がする

施設のサービスを使いこなすことで、生活は便利ですが、その利用料金は毎月の支出になります。

例えば、洗濯や買い物代行などは、一回あたりの料金はそこまで高くありません。でも、これを何度も利用すれば、その都度料金が積み重なり、一年間で見れば10万円以上もかかることもあります。

施設によっては、買い物や洗濯など、面会時に自宅でやることもできる場合があります。これを上手に利用することで、費用をある程度抑えることができます。もし他にもできることがあれば、施設に相談してみるのもいいでしょう。何かしらの方法で、支出を工夫していくことが大切です。

介護施設の費用の支払いは計画的に

積まれたコインの山が5つ

介護施設に入居した後で費用の支払いが難しくなる状況を予防するためには、事前に費用を考慮してライフプランをしっかりと練ることが非常に大切です。

介護施設の費用の支払いは本人の貯蓄を使ったり、年金収入に加えて家族からの資金援助を受けることが一般的ですね。でも、介護破産を防ぐためには、希望的観測を捨てて余裕をもった予算をプランニングする必要があります。

家族からの援助がある場合でも、限度があったり援助費用が変動することもあるので、介護施設の住み替えの可能性をいつでも考えておくことが大切です。入居後に経済状況が変わることはよくある話です。もしも金銭的に厳しくなった場合は、家族やケアマネージャーなどと相談しつつ、公的支援を受ける手続きを進めることが必要です。

こちらの記事で紹介した様々な制度についての知識を身につけておくことで、介護破産のリスクを軽減できるので、ぜひ覚えておきましょう。

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